昨年12月25日、表現の自由の問題を考える上で重要な判決が出た。日本軍「慰安婦」写真展を一方的に中止したニコンに対し、韓国人写真家・安世鴻さんが損害賠償などを求めた訴訟の判決である。

AhnSehong

原告の安世鴻氏

3年にわたる裁判では、ニコンが中止理由の一つとした「反日的」などの抗議はメールと電話数十件程度だったにもかかわらず、24時間以内に社内会議で中止決定したことも明らかになった。

判決は、ニコンの中止決定が、「ニコンが原告と何ら協議することなく一方的に本件写真展の開催を拒否した」、「原告の表現活動の機会を奪うもので」、不法行為に該当すると明確に判断し、ニコンに110万円の賠償を命じた。

弁護団は「本判決が、表現の自由の保障に関する憲法学上の知見を、私企業が運営する施設の利用関係にも及ぼした」と評価。安さんは、「表現の自由を守る判決」「ニコンには、写真家を支える企業として、同じ方向を向いてほしい」と述べた。

残念だったのは、ニコンが最後まで謝罪しなかったこと、ニコン選考委員の写真家らや写真団体が沈黙したことだ。また、判決報告集会で小倉利丸さん(元富山大学教授)は、「慰安婦」問題に対する日本人の認識が問われた事件でもあったとし、今後は「作家だけでなく、観る者の権利侵害に抗しともに原告になるなど主体的にかかわる闘い方ができれば」と指摘した。

1月8日までに敗訴したニコンは控訴せず、判決は一審で確定。安さんは「表現者、鑑賞者、被写体3者にとって『表現の自由』は重要だ。こんな事件が再発しないよう、ねばりづよい関心と監視が必要。今後も性奴隷被害者の取材を続け、発表していく」と決意を語った。

公的な施設でも「表現の自由」を侵害する事件が増える今、私企業の施設でも、抗議を理由に安易に表現活動を中止してはならないという判決は、大きな意義がある。

岡本有佳(教えてニコンさん!ニコン「慰安婦」写真展中止事件裁判支援の会世話人)

『週刊金曜日』2016年1月15日(1071号)より転載。

 

追記:判決の意義を確認し広めるためシンポジウムや裁判記録集の出版をすすめている。

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